木曜日

石と名水で癒されるスイスの温泉スパ ( スイスめぐり -8- )


永遠の命を授ける神秘の泉。実際にこんな泉を見つけることは不可能だが、グラウビュンデン州の山村ヴァルス ( Vals) にあるスパは、当たらずとも遠からずだ。

ヴァルス村の住民たちはここから湧き出る名泉と、この名水が噴き出る岩盤で生計を立てている。

 ヴァルスの丘に続く細い道は、突然固そうな花崗岩の山肌に遮られる。脇に逸れて曲がりくねった道をまた登って行くと、今度は川が完全に行く手を遮る。

ヴァルスにある2つの温泉からは、1分間に計400リットル以上の温泉水が噴き出す。このうち半分は、ミネラルウォーター「ヴァルサー ( Valser)」として売られていく。もう半分はヴァルス・スパの温泉で使われる。

 この小さな村にスパ・リゾートができて約40年。しかし、1996年に新しいスパがオープンするまで、この村はほとんど無名に近かった。

 スイスの有名建築家、ペーター・ツントー氏は、地元から掘り出した石材をふんだんに取り入れたスパを設計した。スパの水は、もちろんミネラルウォーター。地元特産の石が非常に効果的に使われている。

 ツントー氏は約4万枚の石の板を積み上げて壁を作った。この壁は様々な大きさの地下の部屋を取り囲み、まるで瞑想のための寺院にいるような雰囲気をかもしだしている。

 「当初の計画では、山の内側にスパを建設する予定だったのですよ」と語るのはアナリサ・ツントーさんだ。アナリサさんは、ペーター・ツントー氏の奥さんで、スパ・リゾートのディレクターも務める。

 「また、他にも巨大な大丸石を切り開いて中にスパを作る、というアイデアも出ましたが、どちらも実現は不可能でした。結局、山をいったん崩して、地層をまた1枚ずつ再構築していく、という方法を選びました。それで最終的には、『山の内側にスパを作る』という彼のアイデアは現実化したというわけです」

山の斜面に作られたスパ ( 写真提供 : テルメ・ヴァルス )

swissinfo - 2006/12/20

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