上之保ゆず祭り 全国ブランド目指しPR
特産のユズをPRする「第1回上之保ゆず祭り」が3日、岐阜県関市上之保の上之保温泉ほほえみの湯で開かれる。「ゆずの里」としてのイメージを定着させることで、全国に販路を伸ばす試み。人口約2300人。過疎と高齢化に悩む山間部の“村”で、香り高い果実にかけた夢が広がる。
ユズ栽培は1996年ごろ、当時の上之保村が中心となって本格化した。現在は、約300戸の農家が、約7800本を栽培。昨年は約8・9トンを収穫した。
上之保村などが出資した会社「ハートランドかみのほ」(宇佐見勝彦代表取締役)は、ゆず生産組合や、かみのほ特産品加工組合と連携し、ジュースや「ゆずしょうゆ」、菓子などを次々に開発。商品は約20種類にも達した。
しかし、まだ若いユズの木が多いため、勝負は収穫量が安定する5年後から。宇佐見さんは「あらゆる場所で宣伝に力を入れ、将来の販路を確保したい」と語る。
上之保には、目標とする産地がある。「高知県馬路(うまじ)村です。あそこはすごい。少しでも追い付くことができれば」と話すのは、関市上之保事務所の波田野一人さん(40)。人口約1200人。全国的に有名なユズ産地で、上之保の人たちも視察した小さな村だ。
馬路村農協(東谷望史組合長)によると、ユズや加工商品の出荷額は、年間ざっと31億6000万円。上之保の約2000万円に比べると、けた違いに大きい。成功の秘訣(ひけつ)はどこにあるのか。
同組合広報担当の菊池史香さんは「村とユズを丸ごと売り出したのが良かった。子どもたちにもPRに参加してもらい、村の風景を商品に重ね合わせた」と、振り返る。
馬路村は、四国を中心にテレビCMを流すなど、積極的な宣伝活動を展開。その商品は、関市内のスーパーにも置いてある。ぽん酢しょうゆ・ゆず畑のラベルには「ぼくの村」と題してこう書いてあった。
「村のおんちゃんおばちゃんは、こつこつとゆずを作っています。いつかぼくの生まれた馬路村にも遊びに来てください。子どもさんの川遊びにはぼっちり(ぴったり)です」?。自然豊かで、のどかな風景。素朴な山里のイメージは、商品に対する親しみと信頼感につながる。
上之保でも、産地のブランド化を目指し「関・かみのほ 美濃ゆず」と銘打ったイラストやロゴを作製。ゆず祭りには、のぼり旗も用意した。ハートランドかみのほ職員の青山裕幸さん(30)は「ここは、人が温かくて、懐かしい感じがする土地。上之保とユズとを一体化させることで、商品の魅力がさらに高まるはず」と期待する。
青山さんは、1歳になる長男を柚輝(ゆずき)と名付けた。「馬路村を目指し、何としても成功させたい。そうじゃないと、息子から『どうして、こんな名前にしたの』と責められますよね」。取材でユズ畑に向かう途中、そう言って笑った。
<上之保ゆず祭り> 3日午前9時から午後3時まで。ユズの品評会、野菜市、郷土料理体験などのコーナーを開設。地元の女性たちが考案した「ゆずうどん」も初めて登場する。問い合わせは、会場の上之保温泉ほほえみの湯=電0575(47)1022=まで。
中日新聞 - 2006/12/3