長崎・五島産のサバをメーンに、九州の幸を使った創作料理が楽しめる居酒屋「きはる」(福岡市中央区)で「泳ぎサバのシャブシャブ」(1人前1800円)を味わった。ベルリン、ニューヨークなど海外でも修業した経験を持つ、この道16年の斉藤哲也料理長(33)の感性が生んだユニークな逸品である。
楽しみが2倍の鍋だ。まずは佐賀・嬉野温泉の温泉水で温泉豆腐を食す。土鍋の中で煮立つ木綿豆腐は徐々にとろけ始め“温泉豆乳”に変身していく。トロトロのムース状になった豆腐を橙(だいだい)の酸味が生きた自家製ポン酢で十分に味わった後に、さらなるお楽しみが。土鍋に残った豆乳で、長崎・五島沖で獲れた天然のサバをしゃぶしゃぶするのだ。
重さ1キロを超える大物も獲れる、旬の五島産サバ。「関サバよりも身がプリプリで脂のノリが良い」(斉藤料理長)のが特徴だ。五島列島を漁場にする漁船から毎日直送される活魚を、営業開始直前にさばく。この文句の付けようがない素材のイキの良さがウリだ。
サバをしゃぶしゃぶで食すツケダレは、ポン酢に加えてもう1種類。3種類のしょうゆ、カツオ&昆布ダシ、みりんなどにごまを合わせる自家製ごまダレだ。お好みでネギ、もみじおろし、ゆずコショウの薬味を加えて味わう。
皮はつややかで鋭い輝きを放つ青魚でありながら、身は上質な白身魚のように澄み、うっすらと脂が浮かび上がる。刺し身でも味わえる生の薄造りを、湯葉ができそうなあんばいの“温泉豆乳”に軽く泳がせる。
乳白色にコーティングされた身をごまダレで食べる。豆乳のクリーミーな味わいと香ばしいごま風味の中に、旬を迎えたサバのうまみが顔を出す。身は一切くさみがなく、弾力ある歯応えが心地よい。ほどよくのった脂は優しい味だ。
う?ん、もう我慢できない。日本酒の熱かんをキューッと1杯いきますか。【栗田真二郎】
日刊スポーツ - 2006/12/20
ラベル: 九州地方, 嬉野温泉