とくに高温多湿の屋内温泉浴室よりも、どちらかといえば露天風呂の方が、お湯の温度が低めで、頭寒足熱なのでここちよいでしょう。冬季の寒い地方の環境を避ければ、露天風呂は温泉の醍醐味が味わえます。
海浜の温泉地は一般に天候は穏やかです。一日の気温の差は小さく過ごしやすい環境です。
昼間は海から陸のほうへ風が吹いて、夜は反対に陸から海へ向かって吹きます。このように海浜では風が交代に吹くので空気の流通が行われていますから、空気は清浄です。海浜の露天風呂では、温泉浴と海の空気浴を共に楽しめます。海からの風は湿気や塩分を含みますが、花粉や塵もありません。ただし花粉アレルギーの人は、陸風の吹く夜は向きません。
海浜の温泉地は緊張感から解放されてリラックスし、自律神経系が安定するので高齢者、高血圧者、更年期を迎える女性、ストレスが溜まって疲れている人、働き盛りの人たちの休養に向いた場所といえます。
山の温泉地は、100メートル高くなるにしたがって0.6℃気温が下がります。気圧、湿度は、標高が上がるとともに減少します。
海抜1000メートル以上の温泉地は、気温は6℃低下し気圧や酸素も12%ほど減るので、身体に対して刺激が強く、緊張度も高まります。したがって高齢者、高血圧の人、肺や心臓の弱い人には1000メートル以上の高山の温泉地、露天風呂は向きませんが、青少年者の鍛錬には向いています。
また、夏季以外の季節は冷えるので露天風呂の入浴には温度差に注意が必要です。早朝、日没以降はとくに注意が肝要です。
500?800メートルほどの高原、深い山間、湖畔での露天風呂の入浴は爽快な気分にしてくれます。雑念を捨て精神統一をしたいとき、緊張から解放されたいときには勧められます。
また、樹葉に覆われた露天風呂もよいものです。樹葉のフィルターにより、やわらかい太陽光線が得られ、皮膚を強い紫外線から守ることができて温和な日光浴ができます。緑の色が豊富で心理的にも疲れが癒やされます。
目を閉じ鳥のさえずり、風のささやき、水の音などを聴いたり、馥郁とした森の快適な香りをかいだりしながらの露天風呂入浴は、自然環境と温泉にどっぷりつかれて、この上もない至福のひと時です。
(2006年10月24日 読売新聞)
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